辰巳瀧 美術の小径

「美術の小径」は昼なお鬱蒼とした森の中、轟々と音を立てて流れ落ちる滝(辰巳用水の分流)の脇、石川県立美術館裏手から中村記念美術館方面へ降りる階段坂。
入り口も出口も奥まっているため今まではちょっと目立たない存在だったけど、降りた先に鈴木大拙館が出来たコトによって(緑の小径という新設された散策路によって繋がっている)回遊の動線として徐々に浸透しつつある。
複雑な地形の金澤には個性的な坂が沢山あるけど、ここまで木々に埋もれている坂はここだけだろう。
一帯は「入らずの森」として何百年にも渡って手付かずのままの原生林。
大拙館のトピックでも書いたけどこの周辺は全て元「本多家」の敷地。この急な階段坂もルートはほぼこのままで藩政期から存在していたとのコト。
坂の上と下にある美術館を結ぶ坂、という意味合いからの命名だろうけど、本来は「悠久の森の小径」とでもいうべきか・・・
街の真ん中にあって「森の中に潜っていく」様な感覚を味わえる坂。
2011年11月04日 15時15分撮影
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近くて遥かな旧市街(卯辰山 見晴らし台付近)

起伏に富む旧市街には多くの個性的な坂があり、その昇り降りでの次元の違い(香り、湿度、空気感・・・場を構成する要素の連続した変化)を肌で感じながら歩き、佇むコトは金澤の大切な味わいの一つだけど・・・
そこから「ほんのちょっとだけ」足を伸ばすとさらにダイナミックな変化を楽しむコトが出来る。
これは1月の上旬のある日、卯辰山の「見晴らし台」付近からの旧市街の眺め。
密集する家々の屋根に前日に降った雪が薄く乗り、街並みがホワッと白い。
遥か彼方、太陽の下に薄く伸びる水平線はこれから鈍く輝き出す頃か。
随分山奥に居るようだけど実は・・・代表的な観光地の一つ「ひがし茶屋街」からわずか1,2キロくらいの散策で眺めるコトが出来る光景。
(観音坂女坂〜花菖蒲園〜千杵坂〜豊国神社脇〜善妙寺脇の遊歩道を抜けるとすぐソコ。高低差はちょっとあるけど)
モチロン駐車場も整備されているので、車で観光にいらっしゃった方も気軽に立ち寄って(兼六園からもクルマだと10分とかからない)この「近くて遥かな光景」を眺めて頂きたい。
2012年01月09日 16時13分撮影
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浅野川小景 雪舞風姿


幼い頃「陽が射している中、雨が降るのは狐の嫁入りといって珍しい現象」と何かの本で読み「そういう空模様」に遭遇するたびに「今、貴重な体験をしているんだ♪」と子供心にちょっと興奮した。でも実は金澤では一年を通してそういう天気はしょっちゅうある。そしてモチロン冬、雪の時も。
「金澤の冬は暗く雨や雪ばかり・・」と一般的に思われがちだけど、実際はなかなか変化に富む味わいのある空模様の日が多い。
晴天と雨天「照り降り」の素早い移り変わりだったり、大雪の空の何処かから陽が射し込んでいたり。
例えばバラバラと音を立てながら激しくアラレが降る兼六園の眺望台から眺める卯辰山方面には明るい陽が射している・・・様な光景もそれほど珍しくはない。
(この映像小品も注意深く観て頂くと、多くのカットでなにかしら陽の光が差し込んでいるのがお分かりになるでしょう)
空一杯に舞い落ちてくる雪片に陽が射してチラチラ輝き、一面真っ白になった地表からの反射も加わり淡い光がフワフワと拡散する空間が出現する。薄墨を溶かしたような雲間から時折覗く銀色がかった遥かな青色。
そんな中の旧市街を歩き、佇むのはこの季節、この時ならではの楽しみ。
枝まで静止した木々や雪の舞う様子から「比較的風が弱い」コト、また人々の服装から「それほど寒くない」コトも分かって頂けるでしょう。(雪の深夜でも気温が氷点下になるコトは希)
※ロケ場所は浅野川大橋から天神橋までの間と西養寺。音楽は藤田嗣治回顧展のために作った曲を再アレンジ。
撮影は2011年1月2日、7日、8日
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「金澤冬の廻り舞台」中の橋から

何度も書いているけど、金澤の冬の空は決して「暗く重たい」だけじゃない。
天気予報では「一日中雨」でも、実際はクルクルと廻り舞台が回るように・・・
何度も何度も細かく晴れ間が訪れる日がかなりある。

「関東は晴ればかり、北陸は一年中雨ばかり」は冬の対称的な気候によって広まっている概念だけど、日照時間は東京のほぼ9割。(気象庁発表の「1981~2010年平均日照時間」では東京1881時間に対して石川1680時間)
さらに「こういう日照にはカウントされない晴れ間」(モノの影がハッキリ見える位じゃないと日照とはカウントされないらしい)を加えると「青空出現率」はもっと近いだろう。
金澤は雨も多いけど、晴れ間も頻繁に訪れる「遥かな雨上がりの空が多く出現する街」
雨に洗われ透き通った大気に拡散する青色、細かく豊かなグラデーションを見せる雲が織り成す束の間の青空は、濡れて鈍い光を放ちながら沈む街並みと相まって最も金澤の冬らしい、美しい光景。
この写真を撮っている時も雨は降っていてまた五分後には一面雲に覆われて、でもまた何度も陽が射してきて・・・冬の金澤はまるで「廻り舞台」に乗っているかの様。
2011年11月25日15時01分撮影
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大拙寺(鈴木大拙館)四

開館した10月の時点でも既に素晴らしかったけど「この木々が紅葉したらどんなに綺麗だろう・・・」と期待していたその光景を遥かに超えた現実がさりげなく展開してる11月の終わり。
以前「なんらかの前景に嵌めこまれた月を観る」のが金澤のお月見の醍醐味・・と書いた様に、風景を切り取って観せて、見事に昇華させるのは金澤の得意技だとは思っていたけど、この紅葉の風景はちょっと「そういう技」の次元を超えている様。
常緑樹と混じって立つ十本程(多くても十数本くらい?)の紅葉している樹が館と一体となって出現させる光景には「紅葉が魅せる美のエッセンスがここに凝縮されている」と思える位、心を動かされる。この館のアチラコチラに登場するモチーフ、三角(カタチが出来る最小単位)→四角(二つ合わさって)→◯(さらに集まって無限)にも通じている様にも思う。

紅葉シーズンといえば人々が殺到する様な「辺り一面の紅葉」を思い浮かべるけど・・・本当は僅かな本数が紅葉していく様(ズレから生じる無限のハーモニーを観賞するコト)の中にこそ無限の味わいがあるコトを目の当たりに示してくれている光景。
そんなコトは全部置いておいても・・・単純に美しい日々刻々変わりゆく光景。
2011年11月27日15時19分撮影
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大拙寺(鈴木大拙館)三


開館時間は午後5時まで。春から夏は「まだまだ明るい時間」に閉館してしまうけど、晩秋から冬の終わりごろまではライトアップされた館に浸るコトが出来る。
これは館の北側から。画面下手前には「水鏡の庭」にほんの少しせり出している、小さいスペース(丁度一人が立てる。写真でも微かに見える)があって湖面に立った様に辺りを眺められる。
正面に見えるのは設計にあたっても重要なポイントになった樹齢300年を超える楠。
晩秋の雲が見せる淡く豊かな濃淡を背景に、暗くなるまで眺めていたい風景。

この場所は館の外なので(中村記念美術館へ続くアプローチの途中)「無料」で開放されている場である点も金澤らしい。毎日の散策途中に眺めてもいいだろう。
近所の21世紀美術館の無料ゾーン(ジェームズ・タレルの作品空間に無料で浸れる施設はかなり珍しいと思う。それも街の真ん中で)や兼六園の早朝無料&年に何回も実施するライトアップ夜間無料開園など、金澤は「市民に観賞して貰いたい文化的要素」を当たり前の様に極力負担なく見せようとする街。
とかく「前田家が百万石の豊かな財を以って花開いた文化がいまに残る・・・」
と紹介されがちだけど
実はこういうトコロに金澤独自の文化が存続&発展し続けている理由の一つがある。
2011年11月25日 16時58分撮影
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大拙寺(鈴木大拙館)二

 「水鏡の庭」を満たす水を波立たせる装置が作動して波紋が起き始めたトコロ。(真ん中に微かに波が見える)波紋は水深14センチの池の隅々まで伝わり跳ね返り、複雑に微かに水面を動かし続ける
この奥には前田家筆頭本多家のお庭だった松風閣庭園が広がる。※禄高五万石(家老としては日本一の禄高)この周辺約10万坪!が本多家の広大な敷地だった。
館の設計にあたって、巧みに藩政期のモチーフも取り入れている様。もう一方の壁が城の石垣をイメージしているとすれば、こちらはなまこ塀なのかもしれない。

極めてシンプルな白く低いラインと木々が構成するミニマルかつ無限の光景。

ちなみに池の底の目地のように見えるライン、実は隙間で水がここから湧き出るように循環している(二重底になっていて底板の下にもう一層、水の層がある)
画面の中央、水面と白壁の間には玉砂利を敷いた側溝があってそこへ「サーッ」と音を立てながら水が溢れ落ちている。
ふと目を凝らすとあちこちの隙間の上、水面が湧き水の様に微かに盛り上がっていたり、落水音が作る音場が意外と意識の下に降りてきたり・・・
「感じとる」ための仕掛けは細部にまで抜かりなく行き渡っている。
2011年11月10日 16時29分撮影
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